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元々他人の事にはあまり干渉したがらないが、全く好奇心が無い訳ではない。
村について何度か聞き出そうかと思ったのだが、喉に何かが詰まるような気がして口の中で舌を動かすだけになってしまう。
「あはは、深く考えるほどじゃないよ~」
一瞬心が読まれたような感覚にビクッと体が反応する。
少々加減気味に目をそちらにやると、隣ではクスクスと少女が無垢な笑顔でこちらを見ていた。
「まいったな、お見通しか」
彼はそう言うと、わざとらしくヤレヤレとお手上げのポーズをとる。
「それじゃ、また何処かで会ったら宜しくー」
軽く少女が手を振り、小走りで宿の方向へと向かっていった。
「また安くしますよ~!」
去り行く少女を見送ったあと、なんとなく空を見上げる。
大体昼過ぎくらいだろうか、太陽が頭上で燦々と輝いていた。
「さて…」と座りすぎて重くなった腰をヨイショと持ち上げ、荷物をまとめる。
遥か遠くの目的地を眺めながら”また野宿か”と溜息をつく。
「こうも野宿が続くと慣れてしまいそうで怖いな」などと呟きながらリュックへと荷物を詰め込み、傍に置いてあったミルクを一気に飲み干し
彼はゆっくりと村を旅立った。
晴れている、正確には晴れていた。
村を歩き出して数時間くらい歩いていたのだが、途中だんだんと空気が湿り更にはポツリポツリと雨まで降ってきたのだ。
「くそーーっ!」
天に向かって張り上げるも雨は強くなるばかりであった。
次の目的地へは山の間を通った直ぐ先の町なのだが、この通り道が曲者で生い茂る木々が光の進入を防ぎ日中でも夜と錯覚するような場所である。
追い討ちの雨で薄暗く見通しの悪い森、それがもっと暗くなって不気味度が格段にアップしていた。
予定では日が沈む前までに森を抜けるハズだったのだが、予想外の雨によって足が地面に阻まれ結局夜の森で一人っきりになってしまったのだ。
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