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そんな様子をじっと見ていたら、樹に脇腹を小突かれた。
「巴、帰りますよ」
「あ、うん」
店を出て、徒歩15分。
そこに、僕が居候している「フラワーハイツ」はある。
「樹、寄っていかない?」
何となく寂しくて、そう言った。
「でも…」
意外にも、樹は言い淀んだのだった。
「頼むよ。何か、寂しくて」
「…仕方ないですね」
乗り気じゃない樹にもう一押しして、了解を取り付けた。
…かといって、部屋に行っても、何をするわけでもない。
ただ何となく、一緒にテレビを見ている。
お笑い番組を見ていて、笑いのツボが同じなのがおかしくて、思わず顔を見合わせて笑った。
そのまま、僕らはすっごく自然にキスをした。
「巴…」
樹の手が、僕の頬に触れる。
ドキドキしてるのが、伝わってしまいそうだ。
「巴…どうしよう。僕、もう止まりません」
樹が少しうつむいて言った。
「樹…」
思えば、僕たちは夏のあの事件の後からキスの先に行った事がなかった。
「…いいよ。樹なら大丈夫」
意を決して言った。
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