第1章

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…それにしても。 何をしても格好いいな、樹って。 ネクタイを締める仕草とか、ジャケットを羽織る所とか。 何をしても絵になる。 「どうしたんですか? じっと見て」 樹が僕の視線に気付いて、意地悪そうに言った。 「なんでもないよ」 「本当に?」 樹に後ろから腕を回されて、顔がかぁっと熱くなる。 「何でもないって。ただ…」 「ただ?」 「やっぱり教えない」 言い掛けたけど、言ってしまったら負けな気がしたから結局言わなかった。 格好いいって思ったって。 「えー。…まぁ、いっか」 樹は僕を背中からぎゅーっと抱き締めて離した。 「さて、僕は帰るとしましょう」 「うん」 「巴、ありがとう。それではまた明日」 樹は僕にキスをして、帰って行った。 何となく名残惜しかったけど、単さんも心配するだろうしね。 僕は、シャワーを浴びて、幸せな気分で龍司さんの帰りを待っていた。
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