330人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまぁ」
龍司さんが帰って来たのは、11時過ぎだった。
何となく表情が暗い。
「龍司さん、どうしたの? 何か…」
「え? ああ。ちょっと疲れただけだ」
何か、それだけじゃない気がした。
「そう?」
「大丈夫だよ」
龍司さんは笑ったけど、やっぱりぼんやりしてる。
「なぁ、巴。愛するのと愛されるのって、どっちが幸せかなぁ?」
突然、龍司さんが言った。
「…そんなの、両方に決まってるだろ」
単さんと何かあったんだって思ったから、ちょっと考えてから敢えてそう言った。
「そう…だよな」
「僕は、自分を愛してくれる人と一緒にいても、自分に他に好きな人がいたら、うまくやっていけないと思うんだ。かといって、好きな人に振り向いてもらえないのも辛いけど…」
でも、僕は密かに、単さんも龍司さんのことが好きなんじゃないかと思ったりしていた。クレセントでのあの様子…あれは、単さんがやきもちを妬いていたのではないだろうか。
「…そうだな」
「どうであれ、僕は龍司さんが幸せになって欲しいって思ってるよ」
「ありがとな、巴。もうちょっと頑張ってみるわ」
「うん」
龍司さんが少し元気になって、ほっとした。
最初のコメントを投稿しよう!