第1章

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「巴、そこ、計算が違います」 バイト前、クレセントの休憩室で、僕らは宿題を片付けていた。 「あ、ホントだ」 間違えた問題を直していると、樹はもう、ノルマを達成している。 「樹、もう終わったの? 早っ」 僕なんて、まだ半分行くか行かないか…くらいの所なのに。 僕が目を丸くしていると、樹は誇らしげに笑った。 「数学は得意ですから」 「そう言うわりに、ここが違う」 そう言って、ノートに書かれた回答の一つを指差したのは単さん。 いつの間にか樹の後ろに立っていた。 「ん? …ああ、よく見つけましたね」 樹がそう言うと、単さんはふっと笑っただけで行ってしまった。 単さんは樹のお父さん。 実は35歳だけど、凄く童顔で、高校生に見えなくもないし、くっきり二重で黒目が大きいその顔立ちは、下手すると女にも見える。 立ってるだけでその場が華やぐ、凄い美貌の持ち主なのだ。
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