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「巴、そこ、計算が違います」
バイト前、クレセントの休憩室で、僕らは宿題を片付けていた。
「あ、ホントだ」
間違えた問題を直していると、樹はもう、ノルマを達成している。
「樹、もう終わったの? 早っ」
僕なんて、まだ半分行くか行かないか…くらいの所なのに。
僕が目を丸くしていると、樹は誇らしげに笑った。
「数学は得意ですから」
「そう言うわりに、ここが違う」
そう言って、ノートに書かれた回答の一つを指差したのは単さん。
いつの間にか樹の後ろに立っていた。
「ん? …ああ、よく見つけましたね」
樹がそう言うと、単さんはふっと笑っただけで行ってしまった。
単さんは樹のお父さん。
実は35歳だけど、凄く童顔で、高校生に見えなくもないし、くっきり二重で黒目が大きいその顔立ちは、下手すると女にも見える。
立ってるだけでその場が華やぐ、凄い美貌の持ち主なのだ。
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