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「巴、先にシャワーをどうぞ」
樹が指差したのは、部屋の入口とは別のドアだった。
「え?」
突然だったからちょっと面食らった。
「だって巴、一緒に風呂入ろうって言うと怒るじゃないですか」
そういえば、前に泊まりに来た時がそうだったっけ。
余計なことまで覚えてるんだから…。
顔が真っ赤になったのが、自分でもわかった。
「そうやってすぐ赤くなるのが可愛いですね」
樹はそう言って僕の額にキスをした。
「さ、行ってらっしゃい」
「ありがとう」
微笑んだ樹に笑顔を返した。
ドアを開けるとそこは洗面所。
大きくはないけど、ちゃんと洗面台がある。
作り付けの棚もあるのに狭くはなくて、結構広い。
奥には、すりガラスのドア。
そのドアの向こうは、これまた結構広いシャワールームなのだ。
シャンプーやら石鹸を借りて、おろしたばかりの服を着て部屋に戻ると、樹はベッドに寝そべって本を読んでいた。
意外だったのは、BGMがJ-POPだったこと。
樹、聴くのはクラシックばっかだと思ってたから。
「僕だってJ-POPぐらい聴きますよ」
ベッドから身体を起こして、樹が言った。
僕って、思ってることがそんなに顔に出るのだろうか。
何かちょっと悔しい。
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