第3章

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「巴、先にシャワーをどうぞ」 樹が指差したのは、部屋の入口とは別のドアだった。 「え?」 突然だったからちょっと面食らった。 「だって巴、一緒に風呂入ろうって言うと怒るじゃないですか」 そういえば、前に泊まりに来た時がそうだったっけ。 余計なことまで覚えてるんだから…。 顔が真っ赤になったのが、自分でもわかった。 「そうやってすぐ赤くなるのが可愛いですね」 樹はそう言って僕の額にキスをした。 「さ、行ってらっしゃい」 「ありがとう」 微笑んだ樹に笑顔を返した。 ドアを開けるとそこは洗面所。 大きくはないけど、ちゃんと洗面台がある。 作り付けの棚もあるのに狭くはなくて、結構広い。 奥には、すりガラスのドア。 そのドアの向こうは、これまた結構広いシャワールームなのだ。 シャンプーやら石鹸を借りて、おろしたばかりの服を着て部屋に戻ると、樹はベッドに寝そべって本を読んでいた。 意外だったのは、BGMがJ-POPだったこと。 樹、聴くのはクラシックばっかだと思ってたから。 「僕だってJ-POPぐらい聴きますよ」 ベッドから身体を起こして、樹が言った。 僕って、思ってることがそんなに顔に出るのだろうか。 何かちょっと悔しい。
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