第3章

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「何むくれてるんですか」 「むくれてなんかないって」 樹はベッドから起き上がると、僕を一瞬抱き締めて、ぱっと離した。 「シャワーに行ってきます。CD、どれでも好きなの聴いて下さいね」 樹が行ってしまって手持ちぶさたになったので、CDを物色してみることにした。 高そうなコンポの下の棚には、信じられない量のCDがぎっしり入っていた。 クラシックやらジャズやら、ジャンルは様々だ。 その中に、1枚だけ隠すように置いてあるCDに僕は気付いた。 ぱっと見た感じはクラシックのアルバムらしい。 ジャケットを見ると、綺麗な顔立ちの男性の写真があった。 名前は…アル…読めない。 “Alceste”とある。 そして、その写真の下の小さな写真には、見慣れたあの人が…。 「樹…?」 今に比べると少しあどけなさが残っている。 写真の下には樹のもうひとつの名前があった。 そういえば樹、初めて会った時はバイオリンケース抱えてたんだ。 でも、バイオリンを弾いてるのを見たことがない。 とりあえず、聴いてみよう。 CDを入れ替えた。
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