第1章

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「単さん、大丈夫?」 「ん?」 今度は英語に取りかかっていた樹が、手を止めて顔を上げた。 「何か、やつれてない?」 「ああ、そうですねぇ。夏頃から深酒するようになりましたが、最近、頻度が高いです」 「何かあったのかな?」 「単は何も言いませんが、何があったのかは大体予想がついています」 「へえ?」 「でも、まあ、本人の問題です。単がどうにかしようと思わない事にはどうしようもありません」 樹はそう言うと、再び英語の宿題をやり始めた。 英文にさっと目を通し、スラスラっと綺麗な筆記体で答えを書いていく。 もちろん、辞書なんて使わない。 樹は日本語と英語とフランス語は不自由なく使えるんだそうだ。 漢字は少し苦手なんだけど。 まぁ、ハーフだし、フランス生まれで中学卒業までフランスで育ったし、教育係も付いていたそうなので、本人曰く、普通。 その、育った環境が普通じゃないと思うんだけどさ。
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