第3章

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「う…」 しばらくすると、そんな声が聞こえた。 そっと腕から抜け出してみると、樹は何かにうなされているようだった。 「…すみません」 何度も繰り返して、眉を歪めている。 「樹」 あまりに辛そうだったから、揺り起こした。 「…巴?」 樹は不思議そうに目を開けた。 「うなされてた」 「ああ…。いつもの事なんです」 何か他人事みたいだ。 僕は、樹を抱き締めた。 「バカ。辛そうだったよ。見ていた僕が辛いくらい…」 「巴、すみません…」 「謝ることはない。君は悪くないよ」 僕は、小さい頃に母さんがしてくれたみたいに、樹の背中をトントン叩いていた。 「…夢をね、見るんです」 しばらくしたら、樹が言った。 「どんな夢?」 「エミールが…立ってるんです。何も言わないのですが、悲しそうな顔をして…」 「エミールは、僕のせいで亡くなったんです」 しばらく間をおいて、絞り出すように樹が言った。 「…え?」 「あの日、僕は寝坊して…エミールを急かしてしまったんです。僕たちの乗っていた車は事故に遭いました。エミールは亡くなって、アルセストの右腕は動かなくなりました。…全部、僕のせいなんです」
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