第4章

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「彼女、来てましたね」 樹が言った。 先に仕事が終わった僕たちは、家のリビングのソファーでくつろいでいた。 「うん…。あの人を見たら、単さんの表情が曇った」 「気付きましたか。…全く、ヤキモチ焼くくらいなら言ってしまえばいいと思うんですが」 樹はやれやれという表情だ。 「…うん」 「本当はお節介焼くのは嫌なんですが、この状態が長く続くのも考え物ですねぇ。…単が帰ってきたら、話をしてみます」 「そっか。うまくいくといいね」 「頑張りますね」 樹が微笑んだ瞬間、玄関のドアが開く音がした。 単さんたちが帰ってきたのだ。 樹はすっとソファーから立って、僕にアイコンタクトをよこしてリビングから出ていった。 代わりに入ってきたのは龍司さんだった。 「おかえり」 何事もなかったようにそう言った。 「ただいま」 龍司さんはいつも通りだった。 「…龍司さん、単さんのこと好きだよね?」 お節介だと思いつつ、訊いてしまった。 「もちろん」 龍司さんはうなずいた。 「単さんと何かあった?」 「いや…。ないけど単さん、最近俺を避けてる気がしてさ。顔を合わせても、何か冷たいし…何か悪いことでもして、嫌われたのかと思って」 そういうことか。龍司さん、誤解してる。 単さんが龍司さんに冷たいのは、嫌いだからじゃない。
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