第1章

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樹って、髪は黒いんだけど、目は青い。色々言われるのが面倒だから、学校には茶色のコンタクトを入れて通っている。 目の色が違えば、大分印象が違う。それだけで別人みたいなのに、髪形を変えて、黒ブチ眼鏡までかけている。何ていうか…オタクっぽい外見になるのだ。 それが、バイトの時は目は青いままだし、眼鏡もかけないし、髪もちゃんとしている。 彼の様子を見ていると、どうやらこちらの姿が素に近いらしい。 「よしっ。カンペキ」 髪を整えて、樹が言った。 蝶ネクタイにベストのウェイター姿は本気でかっこいい。 「それじゃ、今日も頑張ろう」 「ああ」 「遼」が笑った。 樹はバイト中、偽名を使っている。 言葉遣いも変えている。 なかなか念入りなのだ。 「巴? 行くぞ」 慌てて遼を追った。 クレセントは決して大きいとは言えないカフェだけど、いつもそれなりに繁盛している。 料理もおいしいし、僕らがバイトに入る時間帯は単さんがピアノを弾くし、何より、単さんや遼のファンが多いことも確か。 今もお客さんが結構入っていた。 さ、仕事だ。 僕たちはそれぞれ持ち場についた。
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