330人が本棚に入れています
本棚に追加
樹って、髪は黒いんだけど、目は青い。色々言われるのが面倒だから、学校には茶色のコンタクトを入れて通っている。
目の色が違えば、大分印象が違う。それだけで別人みたいなのに、髪形を変えて、黒ブチ眼鏡までかけている。何ていうか…オタクっぽい外見になるのだ。
それが、バイトの時は目は青いままだし、眼鏡もかけないし、髪もちゃんとしている。
彼の様子を見ていると、どうやらこちらの姿が素に近いらしい。
「よしっ。カンペキ」
髪を整えて、樹が言った。
蝶ネクタイにベストのウェイター姿は本気でかっこいい。
「それじゃ、今日も頑張ろう」
「ああ」
「遼」が笑った。
樹はバイト中、偽名を使っている。
言葉遣いも変えている。
なかなか念入りなのだ。
「巴? 行くぞ」
慌てて遼を追った。
クレセントは決して大きいとは言えないカフェだけど、いつもそれなりに繁盛している。
料理もおいしいし、僕らがバイトに入る時間帯は単さんがピアノを弾くし、何より、単さんや遼のファンが多いことも確か。
今もお客さんが結構入っていた。
さ、仕事だ。
僕たちはそれぞれ持ち場についた。
最初のコメントを投稿しよう!