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「龍司さんの様子も変でしたね」
バイト後、休憩室で夕飯を食べながら樹が言った。
樹は、とにかくどんな物でも、道具と名の付く物を持たせたら怪我をするんじゃないかってくらいの不器用だけど、フォークとナイフはとても器用に使う。
そこが流石フランス育ちって所だ。
「そうなんだよな。今日、お皿割ってたし」
何となくぼんやりしていた龍司さんの姿が目に浮かんだ。
「珍しいですね。…事態は案外深刻なのかもしれません」
樹はいつになく真剣な顔をしている。
「うん…」
「とりあえず、様子を見てみましょう。何とかなるかもしれません」
「そうだな」
僕が言ったら、樹はふわりと微笑んだ。
「巴は優しいですね」
そう言って、僕の頬に触れる。
「そんな事ないって」
触れられた所から、顔が熱くなる。
そんな僕の様子を見て、樹はニヤニヤしていた。
「さ、帰ろ」
何だか恥ずかしくなって、そう言った。
「…そうですね。行きましょうか」
休憩室を出ると、単さんがてきぱきと仕事をしていた。
流石、驚く程手際がいい。
龍司さんもテーブルの片付けをしていた。
そんな龍司さんを見つめる一人の女性の存在に、僕は気付いた。
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