男の手は

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俺に父はいない。 俺と双子の妹が生まれるずっと前に癌にかかり、 俺たち兄妹が生まれて暫くしてから亡くなったらしい。 俺たち兄妹も小学生になったある日。 学校から帰ってのんびりしているときに隣家で火事、 あっという間に俺たちの家にも火は燃え移った。母は仕事でいなかった。 妹の手をとり部屋から脱出しようしたが、ドアノブが火の熱によって溶かされ出れそうにない。(このとき俺は右手を火傷した)部屋は二階だし、窓から脱出しようにも出来るわけがない。 俺は助けが来るまで、熱から妹を守るため布団で妹を包み必死にだきしめた。 ただ、俺も妹も限界に近い…そんときだった。誰かが俺の体を包み込んだんだ。 俺たちは無事助かり、 どういう経緯で家から脱出したかは覚えてはいない。 ただ微かに覚えてるのはグシャグシャ泣き顔の母。 それとあの火事のなか 「手、痛いだろ・・偉いぞ。男の手は愛する人を守るためにあるんだ。」て言葉と、 ずっと誰かが抱きしめててくれたこと。 確かその人は坊主頭でちょっとたれ目、左目下には傷痕があった。
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