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夏の暑さも本格的になり、各地で代表校選出のための予選が次々と行われていく
すでに代表校が決まった県もあり、N県の大会開幕はあまり早いほうではなかった
大会までの残り日数はあっという間に過ぎ去り、ついに開会式の日を迎える
毎回のごとく、選手達は来ているものの武田監督は相変わらず遅い
「相変わらず武田監督は遅いな…」
「いつもの事だから仕方ない。一年生、もう少ししたら武田監督来るから待っててくれ」
『は~い』
拓郎の言葉に一年生達はそう返事をする
そして、少ししていつもの武田監督の車が球場へと入ってくる
「悪い悪い。また少し遅れてしまったな…」
「毎回の事なので慣れました」
誰かがそう言うと武田監督は申し訳なさそうに笑う
「すまんな。みんな揃っているな? じゃあ球場入るぞ」
武田監督は何事もなかったかのようにそう言って球場へと入っていき、みんなはその後に続いて球場へと入っていくのだった
球場へと入ると選手達は武田監督といったん別れ、所定の場所へと集まる
そこにはすでに多くの学校の選手達が集まっていて、一年生達はここですでにビビってしまう
そんな一年生達を拓郎がしっかりとまとめる
「一年生しっかり並んで。行進の時は余計な事は考えないで、同じ方の手足一緒に出さないように」
『はい!』
一年生達にそう注意を促して、小さくため息をつく拓郎
その拓郎に炎迅が声をかける
「さすが、キャプテンだね」
「何言ってんだよ… この優勝旗重いから持ってくれよ」
拓郎がそう言うと炎迅は小さく笑う
「それも拓郎の役目だよ。拓郎… 今回、もしまたアイツと対戦する事になったら… 絶対勝とう」
「アイツって言うと… 羽田か?」
「うん…」
炎迅の言葉に拓郎はほんの一瞬表情を険しくするが、すぐにニッと笑う
「もちろんだ。炎迅もそれを目標に入れて練習してきたんだろ?」
「うん。負けたままじゃいられないからさ… でも一筋縄じゃいかないよ」
炎迅がそう言うと拓郎は後ろを振り返る
「そのために、みんながいるんだろ? 野球は1人でやるもんじゃない」
「あぁ… そうだな…」
炎迅はそう言って、室内からわずかに見える空を見つめるのだった
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