夏本番

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N県の100校近い出場校の選手達が全員揃い、いよいよ開会式が始まる 軽快な音楽とともに次々と各高校が行進していく 出番が近づく中、拓郎は後ろを振り向いて最終確認する 「他の一年生は全員下がったか?」 「宮崎達が連れていったから大丈夫。それより…」 炎迅がそう言った視線の先には、表情が緊張でこわばる一年生2人の姿があった 「おいおい、今からそんなに緊張するなよ。とりあえず、手足一緒に出すとすげぇ目立つからな」 「は、はい!」 「気をつけます!」 長山と江口はそう答えるが、表情は変わらずこわばっている 「ま、大丈夫やないか? オレ達もなんだかんだ言うても、しっかり出来たやないか」 「そうだな。しっかり胸はって行進すれば大丈夫。お、次だな…」 稲垣がそう言うと前に並んでいた高校が行進して出て行く 「それじゃあ、行くぞ」 拓郎がそう言って旗を掲げ、前の高校に続いて出て行く  パッと視界が開け、たくさんの観客の姿が目に入り、声援と音楽が緊張した選手達の耳に響く 一年生2人は最後尾でカクカクしながらなんとか行進を終える そして、全出場校が行進を終えて並ぶとすぐに開会式が進行する 優勝旗返還では拓郎が前に出て優勝旗を大会関係者に返還する 「あの優勝旗をもう一度手にしないとな…」 「あぁ、もちろんだよ」 千代崎の言葉に炎迅は掲げられた優勝旗を見ながらそう答える 拓郎が優勝旗返還を終えると、お偉いさんの話や選手宣誓が行われる 「………ん?」 その途中で炎迅はどこからか視線を感じ、あまり目だたないようにまわりを確認する すると、少し離れたところから誰かがこちらを見ていた その人物は炎迅の視線に気づくとすぐに目をそらす (あの選手はたしか… 北浜高校の辻川って言ったっけ? 一年生だけのチームって裕香が言ってたな。でも、中学では有名だった選手ばかり集まってるらしいし、対戦する事になったら楽しみだな…) 炎迅はそう思いながら小さく笑うのだった
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