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N県で開会式が行われている頃、S県でも大会の開会式が行われていた
S県大会にはセンバツを制した橘褒蓮高校も参加していた
その開会式のさなか各高校の選手達が整列する中、羽田はまわりから見ても分かるくらい大きなあくびをする
「ふあ~~あ… 暇」
「羽田… 一応テレビに映ってんだから、そういうのはやめろって…」
前に並んでいた淵田が後ろを振り返らずそう言うと、羽田はニヤニヤと笑う
「そんな事言われたってな… 暇なもんは暇なんだ。これだったらボール投げてたほうがマシだ」
「同感だな。オレもこんなところで並んでいるより、バットを振ってたほうがマシだ」
羽田の言葉にその後ろにいた猛之内がそう言う
「お前らなぁ…」
2人の言葉に淵田はため息をつきながらそう呟くのだった
一方で、監督の炭谷はビシッと整列する選手達を見ていた
「また、この季節がやってきたか… 勝者は喜びと希望にあふれ、敗者は絶望に沈む… 絶望に沈む青年達の表情は、見ていてとても爽快なんだよな… 今年も楽しみ楽しみ。ククククク…」
炭谷はそう言って不気味に笑うのだった
そして、開会式が終わり選手達が炭谷のもとに戻ってくる
「やぁ、みんなご苦労。羽田、デッカいあくびしてたなぁ」
「あまりにも暇だったものでつい…」
羽田がそう言うと炭谷は声をあげて笑う
「クハハハハ! ったく、開会式であんだけデカいあくびをして、暇そうな顔をしてるなんてたいしたヤツだな羽田は」
「笑い事じゃありませんよ… まわりや大会関係者の方から凄い目で見られたんですから…」
淵田が呆れたようにそう言うと炭谷はまた笑い出す
「…プハハハ! すまんな淵田。まぁ、いいじゃないか。暇なのは事実なんだしな」
「……少しは緊張感持ちましょうよ」
淵田が再び呆れ気味にそう言うが、炭谷は聞いていないかのように選手達を見回す
「諸君! 本日をもって夏の大会が開幕した… わかっていると思うが、我々の目標は全国制覇と同時に春夏連覇だ。君達は必ず私の期待に応えてくれると信じているよ…」
そう言って炭谷は妙に不気味な笑顔でそう言う
「もちろんですとも。監督の期待を、いい意味で裏切ってみせますよ」
「そうこなくちゃねぇ… これから面白くなるよ。クヒヒヒヒ…」
羽田がみんなを代表するかのようにそう言うと、炭谷はニヤリと満足そうに笑うのだった
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