夏本番

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10対0と初戦を五回コールド勝ちで飾り、北浜高校の選手達は初勝利を手に嬉しそうにハイタッチを交わす 「いよっしゃ~!」 「おいおい…」 喜ぶ辻川の頭を坂本がポカンと叩く 「痛っ!? なんだよ? しっかり抑えたろ?」 「低め振らないからってムキになって、ど真ん中に投げたストレートを痛打。ランナー忘れて振りかぶりまんまと走られる。見てないのかワザとなのか、サイン無視… まだいくつかあるぞ…」 それを聞いて辻川は複雑な顔をする 「あ~… お前にもバックのみんなにも感謝してるよ…」 「相変わらず反省してねぇな…」 そんな会話を交わしながらベンチへと戻り、ベンチを出る準備をする 「ちょっと油断しただけだよ… 次から、こうはいかない事は分かってるよ」 「期待してるよ。エース辻川」 坂本はそう言って辻川の背中をバシッと叩き、辻川はその背中をさすりながら笑顔でベンチを出て行くのだった この北浜高校の初戦を、高橋がスタンドからビデオを回して撮っていた 「10対0か… 一年だけながら、なかなかいい動きをしてるな… 裕香の睨んだ通りだな」 高橋はそう呟きながらビデオを片付けて球場を後にするのだった そして、学校へと戻り野球部の部室に顔を出す 「こんちは~」 「あ、高橋君。ビデオしっかり撮れた?」 「もちろんだ。はい、これ」 高橋が裕香にビデオを渡すと裕香はそのビデオをすぐにチェックする 「バッチリ! いつもありがとうね。またお願いすると思うからよろしく」 「はいはい。分かってますよ」 高橋はそう言って練習をしている炎迅達のもとに向かう 「お~い!」 「高橋… いつもすまないな…」 炎迅が高橋に気づいてそう言うと高橋は小さく笑う 「もう慣れちまったよ。それより、今日観てきた北浜高校は一年だけながらいいチームだったぞ。ダークホースになるかもしれないな」 「そんなに凄かったのか?」 炎迅の横から拓郎がそう聞くと高橋は大きく頷く 「後でビデオ見ろって。すげぇのが集まってるからさ」 高橋が感心したようにそう言うと炎迅は小さく笑う 「将来有望だね… でも、もしオレ達の前に立ちはだかるなら… 全力でぶつからないとね」 炎迅は妙に楽しそうにそう言って素振りを続けるのだった
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