3000人が本棚に入れています
本棚に追加
北浜高校が夏初勝利をおさめたが、やはり橋詰監督の思った通りほぼまったく話題に挙がる事はなかった
その後、各地で次々と一回戦の試合が消化され、数日で全ての一回戦の試合が終わる
そして、すぐに二回戦が開始され、まず登場したのは星海高校
やはり優勝候補だけのことはあり、初戦を16-0の五回コールド勝ちで突破する
その星海高校の初戦を炎迅達は部室のテレビで観ていた
「やっぱり強いな…」
「原田のヤツ満塁ホームラン打ってるよ…」
「二年の門川ってのも5安打してるぜ」
みんなが口々にそう呟いているなか、みんなの後ろにいた武田監督がパンッと手を叩く
「よ~し、ライバルの観察はそれくらいにしておけ。試合も近いししっかりコンディションを整えておけよ」
『はい!』
選手達はそう言ってゾロゾロとテレビの前から立ち去る
最後に残った炎迅と拓郎は、試合が終わったテレビを見つめながら呟く
「決勝で会おう… 原田」
「もちろんオレ達が勝たせてもらうけどな」
そう言ってテレビのスイッチを切り練習へと向かうのだった
それから数日後、翔南高校の初戦の日を迎える
相手は秋期大会二回戦で敗退していて、正直あまり強くはない学校
武田監督は二年生中心のオーダーを組み、先発は多田でサードには一年生の長山が入っていた
「初試合、初スタメン…」
長山はいきなりの抜擢にぶっ倒れそうになるが、その前に武田監督に声をかけられる
「長山! 余計な事は考えずに、飛んできたボールはしっかり捕る、投げられたボールにはしっかりバットを振る。これさえ出来れば大丈夫だ」
「はい!」
長山はそう返事をするが、カクカクしながらグラウンドへと出て行く
「長山~! リラックスリラックス!」
ベンチスタートでまだ余裕があるのか、江口が笑顔でそう声をかける
その江口を見ながら武田監督は静かに口を開く
「江口… お前も出番あるから、しっかり準備しておけよ…」
その言葉に江口は言葉なく振り返る
「出番は早い方がいいだろう?」
「お気遣いありがとうございます… 先輩~!」
江口は慌ててグローブを持ち、先輩を捕まえてブルペンへと向かうのだった
それを見送って、武田監督は真っ直ぐグラウンドに目を向ける
(さて、今年はどんな戦いになるか… しっかり気合い入れていかないとな…)
武田監督はそう思いながら真剣な表情の選手達を見つめるのだった
最初のコメントを投稿しよう!