プロローグ1 ー銀の砂漠ー

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 サクサクサク…  サクサクサク…  一歩一歩確実に踏みしめながらその人物は歩いていた。 砂から身を守るためにフード付きの外套を着ている。  体つきからまだ少年と呼べる年頃のようだ。  サクサクサク…  サクサクサク…  黙々と、黙々と少年は歩く。  その後ろを少々遅れながら初老の男が歩いている。 「若さま…白の宮殿には確実に着きますし、そのようにお急ぎにならなくとも」 息を切らしながら男が前を急ぐ少年に叫んだ。  ピタリと歩みを止め振り向くと、少年はフードをパサリと後ろにはねのけた。 「私が早いんじゃなくお前が遅いんだ」 漆黒の髪を風になびかせながら、少年はフンッと鼻をならすと男を睨んだ。 「お父上から年寄りにはいたわりの心をと教わりませんでしたかな!」  ゴホゴホとせき込みながら男~年は六十代前半というところか~は恨めしそうに言った。 「だから言ったじゃないか!年を考えて留守番に回れと!」 「なんですと!私はまだまだ若い連中には負けませんぞ」 「ガルシア国の代表の到着が諸外国より遅れるわけにいかぬ!それに…」 「5年ぶりですかな?姫様にお会いするのは…」  男はニッと笑いながら、目を細めて少年を見つめた。 「はやるお気持ちはわかりますが…姫様もお逃げにはなりませんて」 「う、うるさい!」 真っ赤になりながら怒鳴ると少年はまた歩き出した。 そんな様子を楽しむかのように涼やかな風が銀色の砂を舞あげ、 銀色の砂漠を歩く2つの影を優しく月のが照らしていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!