2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
サクサクサク…
サクサクサク…
一歩一歩確実に踏みしめながらその人物は歩いていた。
砂から身を守るためにフード付きの外套を着ている。
体つきからまだ少年と呼べる年頃のようだ。
サクサクサク…
サクサクサク…
黙々と、黙々と少年は歩く。
その後ろを少々遅れながら初老の男が歩いている。
「若さま…白の宮殿には確実に着きますし、そのようにお急ぎにならなくとも」 息を切らしながら男が前を急ぐ少年に叫んだ。
ピタリと歩みを止め振り向くと、少年はフードをパサリと後ろにはねのけた。
「私が早いんじゃなくお前が遅いんだ」 漆黒の髪を風になびかせながら、少年はフンッと鼻をならすと男を睨んだ。
「お父上から年寄りにはいたわりの心をと教わりませんでしたかな!」
ゴホゴホとせき込みながら男~年は六十代前半というところか~は恨めしそうに言った。
「だから言ったじゃないか!年を考えて留守番に回れと!」
「なんですと!私はまだまだ若い連中には負けませんぞ」
「ガルシア国の代表の到着が諸外国より遅れるわけにいかぬ!それに…」
「5年ぶりですかな?姫様にお会いするのは…」
男はニッと笑いながら、目を細めて少年を見つめた。
「はやるお気持ちはわかりますが…姫様もお逃げにはなりませんて」
「う、うるさい!」 真っ赤になりながら怒鳴ると少年はまた歩き出した。
そんな様子を楽しむかのように涼やかな風が銀色の砂を舞あげ、 銀色の砂漠を歩く2つの影を優しく月のが照らしていた。
最初のコメントを投稿しよう!