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相変わらず綺麗な女性(ひと)だとラヴァーンは思った。 そして五年前に会った時と変わっていない。
青みがかった漆黒の髪、大きな紺碧の瞳。少女のようなやわらかな物腰。
美しい人。
「大きくなりましたね。お父様にも面影が似てきました」
にっこりと微笑むと女性は手を伸ばし、そっとラヴァーンの頬に触れた。
その手は月の光のように、朝の空気のように冷たかった。 それでいて心地よくいつまでも触れていて欲しい心境になる。
「あの…ギルは?入り口で離れてしまったのですが…それに、この白の宮殿っていったい…」
恥ずかしさを隠すようにラヴァーンは口早に問いかけた。
クスッと笑うとラヴァーンを見つめて女性は問いかけに答えた。
「ギルは、先ほど会った知己と…アルジギードと談話しています。白の宮殿のことですが…ラヴァーン、あなたはお父様からはどのように聞いていますか?」
「えっと…結界で守られた銀の砂漠に建てられた宮殿で、青の月がでる時期だけ諸外国からの使いを招き入れる。その時に魔の被害の報告を受けて世界の清浄化をはかってくれる…って。あとは行ってからのお楽しみだと…でも宮殿らしきものもないし、他の諸外国からの使いも見当たらないし…」
キョロキョロと辺りを見渡してラヴァーンは不安げに女性に視線を移した。
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