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それは一般的に「幽霊」と呼ばれるモノだった。彼は物心つく頃からそれらを見てきており、それに耐えかねた彼の父親が自分の母親に頼み、「お守り」を渡したのだ。
だがその効力も最近では全く効かず、こうして夜の散歩も満足に出来ないでいた。
「ちっ! 今日は大丈夫だと思ったんだけどな」
隠すこともなく舌打ちをしてズボンのポケットに手を入れそこに冷たい感触を確認してそれを取り出そうとした時――
「なっ……」
彼から見て左側から強い波動が流れてきてそこにいた幽霊が一掃されたのである。驚きを隠せず、その波動があった場所を凝視していると、一匹の白猫が可愛らしい鳴き声を上げて歩いていた。
「猫……? まさか猫があんなものを出すわけがないよな」
一瞬よぎった妄想を頭を振ることで追い出し、彼は公園を出て行った。
その後ろ姿を白猫が見つめていたことも知らず……。
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