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「ただいま、父さん」
玄関に入り、すぐ横にある部屋に声をかける。返事が返ってこないのはいつものことなのでそのまま廊下を進む。
リビングのドアを開けた先にあるテーブルに母親が座っていた。そしてこちらに気付くと怒るわけでもなくにこりと笑った。
「お帰りなさい。今日はちょっと遅かったのね」
「……ちょっとな。それより母さん寝ろよ、明日も早いんだろ?」
曖昧に言葉を濁し、そう話を切り替える。だが時間は0時を過ぎている。それもあってか母親は「そうね」と内容を変えられたことには何も触れずに立ち上がる。
「おやすみ」
「おやすみ」
部屋を出ていったのを確認して、リビングを通りすぎて横の襖を開けて畳張りの事実に入った。
そこにあるのはパソコンデスクと、勉強机、本棚と箪笥だけの質素なもの。彼は部屋の中央…ちょうど電気の真下に立ち、呼吸を整えた。
それは無意識に行う、気持ちを落ち着けるものだった。行うことにより、勉強がはかどったり、よく寝れたりするのである。
「そろそろ……いいな」
30分程行うと押し入れから布団を出して引き、電気を消してすぐに眠りについた。
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