第1話

3/9
前へ
/16ページ
次へ
 携帯のアラームで目が覚める。窓から差し込む光は温かく、心地よい。 「今日から、か……」  起き上がり、目の前にかけてある真新しい制服に着替える。  半年ほど入院生活をしていたせいで学校を留年することになってしまい、それならまた違うところで一からやりましょう、と母親に進められて現在に至る。  適当に朝食を済ませて、学校に向かう。今の家からその学校まで徒歩20分くらいだ。  昨夜の公園を通り抜けてその先にある学校の正門を通る。 「……?」  足を踏み入れたとき、どこかから視線を感じて、ふとあたりを見回す。周りには彼と同じ制服の男女くらいで、周りを気にしている彼のことを不思議そうな目で見ていた。  気のせいか、と自分に言い聞かせてそのまま上履きに履き替えて教室に向かう。入学式という行事そのものが嫌いで、昨日はそのまま夜まで寝ていたのだ。  教室に入ると、いきなり黒板消しが飛んでくる。もちろん避けることなど出来ずにそれは漫画のように顔面に当たった。 「いよっしゃ! 当たった!」 「バカっ! 喜んでる場合じゃないでしょ!」  呆然と立っているとそんな声が聞こえてきた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加