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「ほら、出来たぞ。お前の好きなチンジャオロース。だぞ。今日はピーマン多めだ」
「やった! さすがだ、明正!」
先程までのおどおどした態度を隠すように穣は明るくふるまっていた。しかし、額には汗が少し滲んでおり、無理をしているのが丸分かりだ。
「……ごめんな、穣」
「な、何が? 明正が心配することなんて、何もないじゃない?」
「いや、でも、ごめん」
いいよ、謝らなくても。と、にこやかに答えつつ、手を合わせて、いただきまーす。などと元気にチンジャオロースを頬張り始めた。
食事が終われば時間は二十二時。もう暗くなってくる時間帯である。
「穣、そろそろ帰った方がよくないか?」
「あ、ホントだ。ごめんね、長々とこんなところに居ちゃって」
「こんなところとはなんだ」
あはは。と、穣は元気よく立ちあがり、玄関まで走ると、また明日。とだけ言って家を出て行った。ガチャリとしっかり施錠をし、鼻歌交じりに自宅に帰ってく様を明正はのんびりと二階から眺めていた。
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