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だから、だから俺は、PCの電源を入れた。軽快な電子音と共に、PCが立ち上がる。それを確認してから常に穣とが入っているチャットウィンドウを起動する。そこにはオンライン中である穣のネットネームが表示されていた。
『無事に着いたか、穣』
『当り前です! なんで、ボクが、ボクがこの近距離で迷子にならなくちゃいけないのさ! 馬鹿にするなよ!』
それもそうだ。などと思いながら、こう、打ちこんだ。
『なあ、穣』
『何?』
『穣はさ、俺の友達、だよな?』
『……あたり前じゃん!』
力強い、あたり前。という文字に心が痛んだ。
『それって、俺は永遠に友達ってことなのか?』
『ですです。明正は、ボクの友達だよ、永遠に』
それは、恋人昇格のチャンスはない。ということなのだろうか。変な明正。という文字がディスプレイには表示されている。
『この際だから言うけど』
『なになに?』
『俺、友達は嫌だ』
『え?』
『友達、で終わりたくないな。と思ってる』
『……どういうこと? 親友じゃなきゃ嫌ってこと?』
ちがう。
『そうじゃなくて、俺は、お前と、家族みたいな関係になりたいと思ってる』
『……? 今だって同じようなものじゃない』
そうじゃない。
『……あのな、穣。俺は、お前が、好きだって言いたいんだ。つまり、恋人とか、夫婦とか、そんなのになりたいと、思ってる』
冗談だと笑われるだろうか。直接言えと怒られるだろうか。だが構わなかった。今は、一刻も早くそれが言いたかった。それを言った時心につっかえていた物がスルッと落ちた気がした。どんな回答でも来やがれだ。覚悟はできている。
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