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「お前は恩人相手に茶も出さねーのか?」
「え、先輩それってうちに来……」
「ヒマだから夕飯食ってってやるよ」
「ノォォォォ!!!!」
僕はマンションに向かってずんずん歩いていくツバサ先輩のブレザーの裾を、脇腹を押さえながら片手で引っ張って止めようと試みたけど、無駄だった。
「おい、お前んち何階だ?」
エレベーターに乗り込んだ先輩が聞く。
「……11階です」
「よし、11階……」
「そこのエレベーターちょっと待った!!!ソラ、ソラぁぁぁぁ!!!!」
「!!!」
僕の名前を叫びながらエレベーターに突進してくる男の人、もとい、僕のお父さん。
「お父さん……」
僕があちゃー、とうなだれていると、お父さんはエレベーターに乗り込んできて息を切らしながら満面の笑みで言う。
「ゼェ、ハァ、パパ、ソラと一緒の、エレベーターに乗れて、嬉しいぞ!ゼェ、ハァ」
「……おかえり、お父さん……」
「ただいまソラぁ!!!」
「うぐっ!!」
僕はお父さんに抱きしめられる。
苦しい上に、ツバサ先輩の前で恥ずかしいことこの上ない。
お父さんは僕にほお擦りをしながらようやくツバサ先輩の存在に気づいた。
この人ほど存在感ある人も珍しいと思うんだけど。
「ソラ、この男は?……まさか、お前の彼氏……ぐはぁ!!!」
「僕は男だよ!!」
僕はお父さんにアッパーをキメた。
ツバサ先輩が拍手してくれる。
嬉しくない。
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