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「俺はソラの……」
「ソラの?」
「…………」
俺は思い返していた。
ソラと出会った、あの日のことを。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その日は桜が咲き誇る、星屑高校の入学式の日だった。
「ツバサ、入学式だからってサボってんじゃねーよ」
俺の数少ない友達の桃木光(ももきあきら)が、校長室に向かう俺の背中を小突いた。
こいつはどぎついピンク色の髪をふわっとワックスで無重力に固め、モテ顔をした明るい奴だ。
ちなみにこの時は俺も髪を真っ赤に染めていて、2人してビビッドカラーだった。
「うるせー、お前もサボってたくせに」
「まあね?俺は坂の下の清蘭女子高に不法侵入していちゃくらこいてたけど?お前は何、また屋上で寝てただけだろ。青春時代を棒に振る気か?」
俺たちはそろって入学式をサボったお叱りを受けるため、校長室に向かっていた。
「別にそんなつもりねーよ」
「まさか、まだ別れた傷を負ってるとか?」
「バカ言うな、俺からフッたんだっつの」
俺はバイだから、恋愛対象は男でも女でもよかった。
好きになったやつが、男か女かって話だ。
校長室へ向かう階段をのぼろうとしてるときだった。
「わあぁぁあ!!!」
「!」
階段から飛び降りてきた小さな体を抱きとめた。
なにこいつ小せっ……。
俺の胸に飛び込んできたそいつはバッと顔を上げると俺から離れ、深々と頭を下げた。
「す、すみませんでしたっ!!!」
「あ、ああ、怪我ねーか?」
「はい、大丈夫です!あの、急いでるんで、僕行きますね!!失礼します!!」
たったかたーと行ってしまった、そいつがソラだった。
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