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ツバサ先輩は僕を1年A組まで運んできてくれた。
放課後のオレンジ色の校舎にはもう生徒が残っていなくて、僕の女装は誰にも見られずに済んだ。
……ホッ。
僕は教室でジャージに着替えると、脇腹を押さえながらかばんを掴んだ。
「ツバサ先輩、ありがとうございます。僕は病院行ってから帰るんで」
「あ゙ぁ?てめえの耳は飾りか?このカス野郎。送ってくっつってんだろ」
「え、家までですか!?」
「そうだよ」
「えーと、今日は……」
僕は急いでスケジュール帳を確認する。
ひぃぃぃ……!
今日はお父さんが帰ってる日だ!!
お父さんからなんとしても先輩を守らなきゃ……あれ?逆かな?
とにかくお父さんと先輩が会わなければいいんだよね、うん。
僕は控えめにツバサ先輩を見上げた。
「あぁ?なんだよ」
「(ビクッ!!) な、なんでもないです!えーと、僕は整形外科に行きますが……」
「ついてく」
ですよねー。
「……はい」
僕はため息混じりに返事をした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「右の肋骨にひびが入ってるそうです」
待合室でぐーすか寝ているツバサ先輩に、一応報告しておいた。
「……アイツらにはもう何度もあんなことされてんのか」
あ、起きてたんだこの人。
「いえ、彼らと会ったのは今日が初めてですが、他にも色んな人に色んなことされてます。物を盗まれたり、パシられたり、襲われたり」
「襲っ……!?」
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