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「なんだかパッとしねぇな」
悪態を尽きながら隅っこにドカっと腰を下ろした。ここは一応酒場、屈強な男達が昼間だと言うのにカウンターに座り酒を呑んでいた。やれ、「どこそこの盗賊を取っ捕まえた」だの、「誰其が猛獣にこてんぱんにされた」だのとお互いの武勇伝が飛び交っている。
「最近じゃめっきり高額の依頼も減ったもんだな。…あ、マスター。珈琲、ミルク多い目で。」
こやつはここを喫茶店と勘違いしているのではなかろうか?マスターは静かに頷くと拭いていたカクテルグラスに傷がないかを確認した後、棚へと戻し珈琲を引きはじめた。
店内はカウンターの数席とソファーの置かれたテーブル席が3席あるだけ。お客は昼間から酒をかっくらう賞金ハンターとおぼしき4人組がカウンターにいる以外を除くと彼だけだ。
……正確にいうと私を含め2人と言うべきかな。
「この街も限界かもな。」
広げていた数枚の討伐依頼の書類をテーブルに投げ捨て男は大きく背伸びした。
大きくと言ってもカウンターの屈強な4人組に比べれば貧相な体つきである。しかしまぁ言い方を変えればスマート。知的漂う男前。
ふむ。言葉と言うモノはよく出来ているようだ。言い方を変えればがらりと印象が違う。モノは言いよう。まぁ初登場であろうし、少しばかりは褒めても罰は当たらないであろう。
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