第1話

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私は着てきた服を脱ぎ、スーツに袖を通した。 「うわぁ…」 初めて着たスーツ。自分が大人っぽく見えて、なんだか背筋が伸びた。 「どうだ?」 「先生」 私は試着室のドアを少し開け、先生を見る。 「しゃきっと出てこいよ」 ほんの少し開いていたドアを、先生はガッと開ける。 「なんだ似合うじゃねぇか。何もったいぶってんだよ」 「いやぁ…何か恥ずかしいなって思いまして…」 先生の切れ長の綺麗な目で、私の足の先から頭まで見られると思うと、「どぉ似合う?」って出て行けなかった。 「よし。それにしろ。大学生に見えるぜ」 「大学生……じゃあ、着替えるね」 「りな?」 パタン 私は静かに試着室のドアを閉めた。   
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