第一章

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まだ春の心地良さを残し、同時に初夏の気配を匂わせ始める五月というのが僕は大好きだ。 高校に入りまだ間も無く、クラスにはそこそこ馴染んでいる程度の僕はその休日を持て余していた。 ただ、無駄に過ごすのは勿体なく、何処かにいこうかと腰を浮かす。 なにとなく、向かった駅のホームに設置された椅子に腰掛け、最初に来た電車に乗ろうと決めた。 十分、二十分と待ちようやく電車の到着を知らせるアナウンスが響き、下りの電車が来ると告げる。 買った切符は百六十円分。 財布の中にあった小銭が丁度その額だったのでそれを買い得た。 勿論、この切符で行ける駅など知らない。 せいぜい二三駅が関の山。 だから三駅目で下車した。
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