第一章

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下りた駅は閑散としていた。 駅から出ようと改札口に向い切符を通す。 ポーンという電子音がなり、改札口に向いている駅員用の窓口で肘を付き船を漕いでいた駅員がビクッと顔を上げて確認する。 少し笑いを噛みながら開いた改札を通ると、駅員もまた肘を付き、頭を手で支え居眠りに入る。 …おっと、電車の時間表だけは貰っておこう。 と、窓口のすぐ横にある小さな置き場から一枚だけ時間表を抜き取る。 そして、駅を出た。 *** 駅を出て気付いたのは、改札が一つしかなかったことだ。 西側に行きたい場合はどうすればいいのかと悩んだら直ぐに答えは出た。 駅の直ぐ近くに踏切があったのだ。 つまり、西側から乗るにはこの踏切を越えてこの改札を通らねばならない。 不便ではないのか、と思って西側はどうなっているのだろうかと覗いて見れば、民家が一件二件とポツポツあるだけでその他は全然見当たらなかった。 東側を見れば、民家はパッと目に付くだけで十五件程度。 どうやら、東側に民家は集中し、西側には主に畑や、雑木林などが広がっている様だ。 風が走り、ザワザワと雑木林が唸る。 まるで、一つの巨大な生物のような感覚を得る。 それに魅入られ、ついつい西側へと歩を進めた。
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