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思わず感嘆してしまう。
何故なら、それはドンと構えた山であるのに、そこから感じるのは哀愁であり。
また、夕暮れの紅い日が身の毛もよだつような空々しさを映し出すものであり。
そして、僕にはこの一瞬が果てしなく芸術的に思われた。
自然と息が上がる。
心臓が躍動する。
脳はこの一瞬を逃すまいとニューロンとシナプスの電気信号で脳を焼き切るがごとくスパークする。
僕は確信する。
これに芸術を見出すことは今において他にない。
たっぷり十秒はただ見ることに集中し、すぐに駆け寄り登り出す。
ゴミの山を、だ。
そして、越えた先に何が在るのか、それとも何もないのか、それだけを確かめるために急いで登る。
理解している。
僕は対外的な芸術には熱しやすく冷めやすい。
だから、まだ、心が震えて、熱を吐きだし、全身の血脈が煮え滾っている今の内に―――っ!。
突然澄んだ良く通る声が降ってきた。
「ようこそ、最果てへ」
迷い込んだ雑木林の奥の奥、うずたかく盛られた粗大ゴミの山を越え、目の前に現れた更に高いゴミの山。
不法投棄された冷蔵庫に腰掛け、肘を膝に付き、全てを見据えるかのような青い瞳で僕を見据え、言ったんだ。
「ようこそ、最果てへ」
それが、僕と彼女、神だと名乗った彼女との邂逅だった―――…
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