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― そのことりたちの姿を遠くから見つめるふたつの影があった。
「行ったか、工藤?」
「ああ、今ゲートから入っていったよ」
ひとつは純一たちのクラスメイトである杉並。彼は頭脳明晰、運動神経抜群でありながら、“杉並あるところに事件あり”といわれるほどの生粋のトラブルメイカーであり、純一はいつもこの悪友の突拍子もない行動にふりまわされているのだ。
そしてもうひとつは、杉並と同じく純一の同級生、工藤叶だった。
成績優秀のうえに純一や杉並とは違いクラスでは人望も厚い優等生で、とくにその端整な顔立ちは“美少女”といっても十分通用するほどだ。
「おまえが女なら間違いなく告白してる!」
と、クラスの男子たちにため息をつかせることもしばしばだった。
そんな彼だが、なぜか純一や杉並と馬が合うのかよく行動をともにしている。
「しかし、本当に朝倉やことりたちを尾行するのか?」
いかなるルートからなのかはわからないが、杉並はその恐るべき情報収集能力を駆使して純一たちが、デート特訓をするという情報を入手して見物に来ているのだ。
「当然だ。これから面白イベントが遂行されるのだ。これを見学しない手はあるまい」
さも当たり前という口調で説明する杉並を前に、工藤は隠そうともせずため息をつく。
昨晩、急に、「明日ヒマか?私に付き合え」と呼び出され来てみれば、何やら他人様のデートをコッソリ見学するらしい。工藤が頭を抱えるのも無理からぬことであった。
「どうせなら、俺もデートで来たかったな……」
「何か言ったか?」
「いや、なんでもない。こうなりゃ、とことん付き合ってやるさ」
そんなやりとりをしながら、ふたりはさくらパークの中に消えていった。
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