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「……ったく、かったりぃなぁ」
うららかな陽射しが窓から降りそそぐ日曜日の午後。
こういう日の過ごし方は当然“昼寝”と相場が決まっている。だけど、あいつときたら、何を勘違いしたのか、今日は徹底的に掃除する!と言い出しやがった。
まったく、部屋が少しくらい汚くたって、死ぬヤツはいない。むしろ部屋がモノでいっぱいになってゆくのは自然の摂理であって…。
そう抗弁する俺に、彼女は有無を言わさず部屋を掃除するように命令した。
まぁ、こんなことであいつのご機嫌を損ねるのもばかばかしいから、かったるいけれどここはおとなしく従っておくことにしよう。
「とはいえ……どこから手をつけていいものか」
自然の摂理とはいえ、たしかにこれはちょっと手ごわそうだ。とりあえず目についたモノから片づけていこうということで、まずは部屋の隅に積まれた古雑誌をまとめてしばることにする。
それにしてもずいぶんとため込んだものだと、つい一冊手にとって中身をちらっと見てしまう。
―それがいけなかった。
中身を確認するだけだと思ってちょっと読み始めたら、もう止まらない。
気付けば、山積みの雑誌全部を読破していた。
窓から射し込む陽の光は、いつしか夕暮れの色に変わりはじめている。
「や、やばい……」
半日かけて片付けたのが雑誌の山ひとつだとあいつが知ったら、どんな反撃にでるか想像もつかない。
「……ねぇ、掃除終わった?」
彼女が下の階から声をかけてくる。
ま、まずい……。
この状況を見られるわけにはいかない。なんとか言い訳を考えないと……。
「ん……?」
雑誌を片付けたあとにぽつんと一冊、アルバムが残っていた。見覚えのない、ちょっと古いアルバムだった。
「これは……」
そんな余裕はないはずなのに、引き込まれるように手にとって開いてしまう。
中には、風見学園に通っていた頃の俺やクラスメイト、それに彼女の写真がたくさん並べられてる。
(いつのまに、こんな写真を撮ってたんだろう)
俺はあまり写真に撮られるのは好きじゃないので、積極的に写るってことはそう多くなかったはずなのだが、こうして見ると折々の行事やらで結構残っているもんだ。
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