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HRが終わると、緒方馨は一気に多数の生徒に囲まれた。
そしてその集団の先頭を切って質問攻めにしているのが、あのアホ千尋。
好きな食べ物なに!?だの、誕生日いつ!?だの、聞いてどうするんだと言うことばっかり聞いている。当の本人は次から次に繰り出される質問に動揺…しているかと思いきや、スローペースではあるがきちんと質問に答えている。
ただ、そろそろ迷惑だろうと思う。うん、迷惑だな確実に。
「お前らそのくらいにしとけよ?転校したばっかで疲れるだろうから」
俺がそう言うと、それもそうだな~と皆散らばり始めた。
「えー!しょーがないなあ、千尋ちゃん偉いから止める!」
「何なんだお前(笑)」
「まあまあ、玲ちゃんにも構ってあげるから!」
「うっせ」
全くこいつ…
あ、そうだ…
「あの、緒方…くん?よかったら放課後とかに学校案内しようか?」
「え?いいの?」
座っている彼と喋ると、自然と下から見上げられる形になる。近くで見ると整った顔をしているように見える。
「うん、緒方くんこそ予定とかない?」
「いや、それは大丈夫」
「なら放課後に!」
「ありがとう」
そう言って微笑む彼に、何故かまた心臓がドクンと跳ねたように感じた。
「いいなぁ!俺も行きたい!」
…言うと思った
「お前追試あんだろーが」
「ぬぁぁ!!!忘れてた!!!」
全く、いちいちリアクションでけぇ奴だな…
千尋とじゃれあいながらチラッと緒方くんを見ると、頬杖をついて窓の外を眺めていた。
なんか…
「なんか気になるなあ」
「っえ!?」
今考えていた事と同じ事を千尋が言ったので、心を読まれたのかと思った。
「気になるって、何が?」
「いや、緒方馨…って名前」
「知り合い?」
「知り合いとかじゃないと思うんだけど…聞いた事あるような無いような」
「気のせいじゃねぇの?」
俺聞いた事ねぇし…
「ま、いっか!」
「いいんかい(笑)」
すがすがしいほど諦め早いな。
もう一度彼の方を見ると、今度は顔を伏せて寝ていた。
何故かわからないが、気になる。
何でだ?
「クスッ…なんか、可愛いなあ」
千尋と漫才気味に話す俺を見つめながらそう呟く彼を、俺はまだしらない。
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