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「ぐはっ…」 「…うっ!」 開いた口が塞がらない、とはこの事を言うのだろうか。 「コノヤロ…!ぐはっ…」 そこには、次々と襲い掛かってくる不良達をいとも簡単に避け、腹にパンチを食らわしている緒方くんの姿があった。 「あ…目開けちゃダメって言ったのに」 俺が見ていること気付いたのか、こちらを振り返り困ったようにそう言った。 「おらぁ…!」 その声に後ろを振り返ると、俺の背後から誰かが鉄パイプを振り下ろそうとしていた。 やられる…っ! そう思い目をつぶる。 ─バキッ 「ぐはっ…!」 …あれ、痛くない… ゆっくりと目を開けると、襲い掛かってきた奴は地面に倒れていて、俺の前には…緒方くんの姿があった。 「お前等の相手は…俺だっつったろ?」 さっきのが最後の一人だったのか全員地面に倒れている。 俺、完全にフリーズしてます。 今だに理解しきれていない状況に俺はただ固まっていた。 「…大丈夫?」 そう言って微笑む彼を見て、一気に力が抜けその場に座り込んでしまった。 「さ、真田くん!?どっか怪我でもした!?」 俺が急に座り込んだからか、心配そうに俺を覗き込む緒方くん。 「や、大丈夫…」 ガタガタと手が震えている。 今になって、さっきまでの恐怖がよみがえってくる。 「…どしたの?どっか痛い?」 「ちが…ちがくて…っ」 緒方くんがスッと俺の目元を拭うのを見て、ああ…俺泣いてんのか、って思った。 俺、情けねぇ… 泣き顔を見られたくなくて俯いてると、急にふわっと抱き締められた。 「…っ!おがたく…!?」 「もう大丈夫、…怖い思いさせちゃってごめんね?」 そう言って背中を優しく擦ってくれる緒方くんの手が、やけにあったかく感じて…次々と流れ出てくる涙を止めることができなかった。 「ヒック…ごめ、元はと言えば俺のせいで…っ」 「真田くんのせいじゃないよ。 …俺が勝手にムカついただけ」 「…へ?」 「うんん、何でもない」 嗚咽でうまく喋れないけど…これだけは言いたい。 「っ…ありがと、緒方く…ヒック」 ほんとに、俺一人だったら死んでたかも 「ふふっ、どういたしまして」 その後、俺が泣き止むまでずっと背中を擦ってくれていた。  
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