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「や、やっぱりいいって!」
「なんで?」
「だ、だって重いでしょ!?」
「え?むしろ軽すぎだよ、ちゃんと食べてる?」
「いやいやいや軽いわけないじゃん!」
あの後、腰が抜けて立ち上がれなくなった俺を、緒方くんは軽々と持ち上げて…今はおんぶして運んでくれてる。
「だって立てないんだからしょうがないじゃん」
「そ、そうだけど…」
男が男におんぶされるなんて恥ずかしいじゃん!
それに…
─ドクン…ドクン
さっきからうるさい心臓の音が、聞こえたらどうしようって思うと…。
「…それとも、お姫様抱っこの方が良かった?」
こちらを振り向きながらいたずらっ子のような表情でそう言う彼の顔が、夕日の光に照らされて…凄く綺麗に見えた。
一気に顔がカァッとなるのが自分でもわかる。
「な、何言って…!」
「ちょ、暴れないで…」
─パサッ
……へ?
「…あーあ、とれちゃった」
「…………えぇぇぇぇぇ!?!?」
緒方くんの背中から体を離した瞬間、俺の制服のボタンに緒方くんの髪が引っ掛かり、そのまま黒い塊が地面に落ちた。
そして、目の前には夕日に照らされキラキラと光る金色の髪があった。
「もー…真田くんが暴れるから。いいや、これも邪魔だから外そっと」
そう言って眼鏡を取り、ぺちゃんこの髪の毛を掻き上げる。
「……っ!」
頭が完全に混乱していて声がでない。
え?は?
ななななにが起きたの!?
「お、緒方くん、それ…カツラ?」
「…えへ、ばれた?」
いやいやいやだって…!
「め、眼鏡もだて眼鏡!?」
「うん、何気に超目いいから」
な、何なんだ…!
「なんで…変装みたいなことしてるの?」
「うーん…それはまだ秘密」
…謎だ、謎すぎる。
緒方馨…何者なんだ…
「…今日のこと、絶対秘密ね?」
そう言ってふわっと微笑む彼に、また心臓がドクンとなった。
「…う、うん…っ!」
こうして俺は、緒方馨の『秘密』を知ってしまったのだった。
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