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「…あ、来た!」
「ふーん、これに乗るのか」
「ちゃんと覚えた?」
「うん、多分」
…なんか、可愛い
昨日はすげぇ格好よく見えたのに今はなんだか可愛く見える。
朝だから少し眠そうで、ちょっとゆっくりめの喋り方とか…。
…まただ。
緒方くんの事考えるとすぐ顔が熱くなる。
何なんだろう、…これ病気かな?
いつもの電車はそんなに込まないけど、この時間は丁度込み合う時間帯だから満員状態だった。
もちろん座れるはずもなく、ぎゅうぎゅうな中緒方くんと並んで立つ。
「すっごい人多いね」
「…この時間は込むんだ」
俺はこの満員電車が嫌いだ。
窮屈だってのもあるけど、それより嫌なのは…
─ビクッ…
っ、…来た…っ!
一気に全身の筋肉が強ばる。
と同時に冷や汗が額を伝う。
そう。
何故か俺は満員電車に乗ると、必ず痴漢に合う。
男が男の尻触って何が面白いのかわからないが、触り方が本当にきもちわるい。
ただ触るだけならまだいいが、今までで一番酷かったのが、前を触ってきた時だった。あれにはもう流石に泣きそうだったのを覚えてる。
「…っ!」
ちょ、揉んでんじゃねーよ…!
「…真田くん?どうかした?」
「へ…?」
「すごい汗かいてない?顔も赤いし…熱でもある?」
「い、いや、大丈夫だよ…っ」
やだ、気付かれたくない…!
「…ひっ!」
嘘だろ…っ、
尻を触っていた手がゆっくりと前に移動し、あろうことかゆるゆると擦りだした。
きもちわるい…っ
─グイッ…
「えっ…?」
急に誰かに体を引かれ、ポスッと胸元に収まる。
見上げると、緒方くんだった。
「…いててっ!」
すると緒方くんは、おそらく俺に痴漢してたやつの手を思いっきり掴んでひねった。
「…何やってんの?オッサン」
その声はいつもの緒方くんからは想像つかないほど低くて、静かなのに威圧感が凄かった。
その時、丁度降りる駅に着き、そのままその痴漢も一緒に降ろして駅員さんに引き渡した。
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