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「失礼しましたー…」 あれから本当に一言も会話を交わさないまま学校に着き、職員室で先生にこってりしぼられた。 職員室から出ると、何も言わずスタスタと歩いていく緒方くん。 誰もいない廊下にその足音がやけに響いて聞こえる。 ─ズキン… なんか…胸が痛い 理由はわかんないけど、彼が俺に対して怒ってるのは間違いない。 でも、その理由がわからない。 あ…もしかして、迷惑かけちゃったから…かな? 昨日も今日も助けてもらって…もううんざりだって思われた? そうだとしたら…謝らなきゃ。 「…っ、緒方くん!」 スタスタと歩いていく緒方くんを勇気を振り絞って呼び止めると、歩く足を止め顔だけこちらを向けた。 「あの…ごめんね?」 「………何が?」 「だって、迷惑かけちゃったでしょ?昨日も今日も助けてもらったし…迷惑だったよね?ごめん…」 なんだか顔を見ていられなくて俯いていると、ハァーっというため息が聞こえた。 「……やっぱり、わかってない」 「え…?」 わかってない…って、何が? 「…俺、迷惑だなんて思ってないから」 「…え?」 「迷惑だって思ってるんだったらわざわざ助けたりしない」 目を合わさずにそう言って、また歩き出そうとする彼の背中に、思わず叫んでいた。 「…っ、でも怒ってるじゃん!」 何でかわかんないけど…悔しくて悲しくて、じわりと涙が浮かんでくる。 「何でちゃんと…目見てくれないの!?何で怒ってんのか言ってくれないとわかんないよ!」 「ちょ、真田く…」 自分でも何言ってんだろうって思う。何をそんなに必死になってんだろって。 「嫌いになった…?」 「え…?」 「男に痴漢されるなんてきもちわるいって思ったから…?もう話したくもない?」 「ちが…」 「そうなら言ってよ!なんかわかんないけど…胸が苦しいんだ…っ」 もう、自分がわからない。 こんなの初めてで…。 「もう…俺わかんない…」 情けないことに、涙が溢れてくる。 …昨日からずっと泣き顔見られてばっかだ。 「……かなわないな、真田くんには」 「へ…?」 緒方くんが何かを呟いたので俯いていた顔を上げると、それと同時に、ふわっと温かいものに包まれた。  
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