車椅子から松葉杖

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車椅子から松葉杖

車椅子で、たまに暴走したりすることがあって、車椅子を没収されてしまった。 夜の誰もいなくなった1階のロビーを暴走しまくっていたところを、たまたまだけど、病棟の看護師に見られていたらしい…。 師長がすごい勢いで松葉杖を持って来て、こう言った。 「あなたは、もう車椅子は必要ありません。これからは、この松葉杖を使ってもらいます。」 それから松葉杖を使うようになった。 でも、階段はまだ禁止だった。 だけど、やんちゃだった私は、ある日 看護師の目を盗んで禁止されていた階段を松葉杖をついて上がって屋上へ行きました。 天気もよく、風がとっても気持ちがいい。 そこでしばらく過ごした。 そして、部屋へ戻ろうと、今度は、下りの階段…。 うまく下りれない…。 なんとか後何段か…。 そのわずかが下りれない。 なんとかがんばって… その時バランスを崩し、松葉杖がカランカランと音を立ててフロア迄落ちて行った。 その音を聞いた看護師が、慌てて駆け付けてくれたので、私は大事には至らなかった。 もちろん、いつもなら大目玉なんだけど、私は小さく身体を震わせ泣いていた。 今迄のうっぷんを吐き出すように…。 看護師は、何も言わず黙って抱きしめていてくれた。
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