benarrivato

１

引っ越したばかりで段ボールだらけの部屋の圧迫感から遂に逃げ出した。
逃げたところで片付けるのは自分だって解ってる！
でもいい加減、飽きた。
引っ越す前から段ボールと触れ合ってきたのだ。
もうあんな箱、見るのも触るのも嫌だ。
大袈裟にストレスを抱えた振りをして見慣れぬ街を歩く。

なんの下調べもないまま住むことを決めた街は思っていたよりは住みやすそうだ。
中途半端なビルが並ぶオフィス街は交通の便が何よりよかったし、コンビニの数も豊富だ。
そして休日である今日のこの人気のなさ！
がらんとしていて素晴らしい。

人があまり好きではなかった。
面倒臭い。
昔から上っ面の付き合いしかしたことがない。
最近では上っ面の付き合いすら疎かだ。
だって面倒臭い。

道路の真ん中を歩いてただ計算されて植えられただけの街路樹の数を数えて歩く。
意味なんてない。
だがそうしている間に左右対称では無くなった街路樹に気が付いて、右折出来る道があるのを知った。
真っ直ぐ歩こうか右折してみようか。