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曲がってみるか。
なんとなく。
特に理由なく右折する。
さっきよりも細い道幅だ。
ビルとビルの間独特の影で微妙な薄暗さ。
そんな道には不釣り合いな、焼きたてのパンの香ばしい匂いに思わず足を止めた。
Cafe ~trastullo~
緑で埋め尽くされた壁にその看板だけがなんとか確認出来た。
…蔦が店を隠すように伸び、外に無造作に置かれた植物達が自由に成長した感が見て取れる外観。
この街には似合わない。
でもこの道には似合ってる気がした。
その営業する気が感じられない店の雰囲気にこそ入る気になる。
パンの匂いが漏れる所を探すように見ると、緑に隠された扉が見つかった。
見つけた扉を遠慮なく開く。
「いらっしゃいませ」
居たのは外人が一人。
白いゆったりしたシャツの前を寛げた感じに開き、黒いサロンエプロンが腰に巻かれているどこにでも居そうなカフェスタッフのスタイルだ。
見てくれは外人なのに流暢な“いらっしゃいませ”だった。
そう広くはない店内を見渡す。
カウンター席が5。
テーブル席が3。
座り心地の良さそうなソファがあるテーブル席へと足を運ぶと、
外人が…いや、店員がメニューを差し出してきた。
紅茶の種類の豊富さに驚いた。
別に全然紅茶には興味がない。
それでも紅茶のページだけで1ページ以上もある店を見たのは初めてだ。
「ホットサンドとペリエ」
あり過ぎて解らない紅茶のページを閉じる。
店員がまた流暢にかしこまりました、と言ってメニューを下げた。
座り心地がいいと思ったソファは期待以上だ。
まだ家具を買い揃えてない身としては参考にしたい。
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