名も亡き、詩

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「誰が僕の鳩を殺したの?」 鴉は涙を流しながら叫びます 大きな声をあげて泣き続けます 傍らには白鳩の亡骸が 傍らにはその白鳩の血溜まりが 鴉は自分が汚れていくのも気にせず、鳩を抱きしめます 不意に鴉の元へ一羽の燕がやってきました 「誰が僕の鳩を殺したの?」 鴉は燕に問いかけます 燕は真っ直ぐに鴉を見つめて言いました 「それはね、君がいたからさ」 燕はそう言って飛び去っていきました 「……僕が、僕がいけないのか」 鴉は白鳩から離れ飛び立ち 自らの頭を下にして石に向かって叩き付けました 「僕は君と同じ場所にはいけないけれど、また君て会って話したい」 鴉はそうか細い声で言いぐったりと動かなくなりました 白鳩は平和をもたらし 鴉は不運をもたらす 彼らは望まなくとも その運命に抗う術はなく 運命もまたそれに従わせる 始まりと終わりは決して変える事の出来ない歯車が 刻一刻と蝕み続ける
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