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恐る恐るといった様子で振り返ったナツの顔は腐乱して肉が崩れ落ちたりただれたりしており、奥歯が頬に開いた穴から見えた。片目は無くなっており、そこから蛆が湧いていた。鼻から膿がこぼれている。
「私、どうしたって孝哉さんの側にいたいのに、こんな体になってしまっては生き返ることもできず、それなら孝哉さんがこちらに来てくださればと……ああっ、本当にごめんなさい。ただ、ただ一緒にいたかっただけなのです」
ナツは涙の代わりに膿やら蛆やらをこぼしながらそこで泣き崩れた。ごめんなさい、ごめんなさい、と何度も口にしながらナツは泣き続けた。
「ナツ、私は死んでしまったのかい」
意外なほどに落ち着いた孝哉の言葉にナツは驚いて顔をあげる。腐肉が勢いで剥がれて落ちた。
「いえ……孝哉さんは生きています。孝哉さんは元の世界に帰ることができます。というよりは生者はしばらくすれば元の世界に押し返されてしまうのです」
ナツは素直に事実を話した。これ以上は孝哉に嘘をつきたくなかった。
「ナツ、今君はとても臭く、汚らしく、そして醜い」
「ああっ、辱めないで」
「あの綺麗な髪はどこだ、艶ぼったい唇はどうした、この馬鹿者が。何故死んだ」
孝哉はナツを強く罵りながら、そうしながら抱きしめた。
「……孝哉……さん?」
「大馬鹿者が……」
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