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甲板で潮風にあたりながら、ふと手に持っているパンフを読む。
「骸島(むくろじま)…12年前に連続怪死事件があり、いつからか【骸島】と呼ばれるようになった。
事件により住民の大半が死亡、当時の生存者はわずか数名…しかし現在消息は不明、今では建物だけが残る廃墟の島となっている…か」
僕は【神崎 祐一(かんざき ゆういち)】19歳、都内の大学に通う平凡な学生。少しワケありで今はこの二泊三日・怪奇の島、骸島ツアーに参加しているんだけど…
「うげ~…酔ったぁ…」
…我ながら情けない。
「大丈夫ですか?」
声に振り向くと白いワンピースを着た女性が立っていた。
歳は…同じぐらいかな?多分。正直な感想…可愛い。
「あの…大丈夫ですか?」
「え!?あ、うん、大丈夫だよ。」
…イカンイカン、つい見とれてしまった。
「あのよかったらコレ…酔い止めです。」
「あ…ありがとう」
「私、お水貰ってきますね。」
水を取りに船長の所へ向かう女性の姿をつぃつぃ目で追ってしまう。
「可愛いよなぁ~、あの子。」
この締まりの無い声は…あの人しかいない。
「桐島さん、カメラの手入れするんじゃなかったんですか?」
「ンなもんと~っくに終わったんだよ!!しかしお前も隅に置けねぇなぁ…ナンパすんなら俺も誘えっての。」
「ち、違いますよ!!酔ってる所を彼女が…」
「逆ナンか?」
「違ぁぁぁぁぁあう!!」
この人は【桐島 武(きりしま たけし)】さん、26歳。このツアーでさっき知り合ったんだけど…いつのまにか親しくなってしまった。フリーのカメラマンをしていて、骸島の風景を是非撮っておきたいらしい。
「おーおー赤くなっちまって、若ぇなぁ。」
「う…ぐ…」
…悔しいが何も言い返せない。
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