惨劇の幕開け

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「そして…背中に激痛が走ったんや、立ってられへんぐらいの激痛やった…だけど少し経ったら痛みが急に消えよってな、気分は優れへんけど…奴を探してここまで来たってわけや…」 説明を終えた田辺さんは先程よりも顔色が悪くなっている。その時田辺さんを見ながら腕を組んでいた桐島さんが口を開いた。 「なるほどな、それで時間がない…か。」 「どうゆうことですか…?」 意味を理解できていない僕は、桐島さんの方を向いて問い掛ける。 すると桐島さんは田辺さんを指差してこう答えた。 「それは本人に聞きゃわかるさ。」 指を差された田辺さんは軽く頷いて話し始めた。 「おそらく俺は…寄生されたんやろな、なんとなくやけど…わかんねん…………あの時の激痛はきっと蟲が背中から入ってきたからやろ……」 「で、でもそれなら背中から血が流れたりするんじゃないですか?その…蟲の大きさはわかりませんけど、やっぱ体内に入るぐらいの傷なので…結構流れてもおかしくないと思うんですけど…」 「俺も自分でおかしいと思って恐る恐る背中に触れてみたんやけどな………カサブタみたいに血が固っとった。多分…蟲が血を固まらせる成分でもだしたんやろな…」 田辺さんはそう言いながら服をまくり、僕達に背中を見せてきた。腰の少し上部…そこにはたしかにカサブタのような物がある。大きさは…直径3センチほど…思ったより大きい。 「まさか…そんな…」 僕は…どうしたらいいのかわからなくなっていた。身の安全を考えれば寄生された(と思われる)田辺さんを置いて逃げるべきなのだろう…しかし…そうと決まったわけでもないし、なにより…自分達を逃がす為に体を張ってくれた恩人を置き去りにはできない………だけど………だけど………
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