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「はよう!!はよう逃げるんや!!」
悩んでいた僕に向かって、田辺さんはそう怒鳴った。
「でも…」
「俺は寄生された!!自分の体やからわかる!!…頼む…君達を殺しとぉない…、はよう逃げてくれ…はよう!!」
田辺さんは悲しそうな表情をしながらも僕を怒鳴り続ける。怒鳴られても悩み続けている僕に向かって、桐島さんも厳しい口調で催促した。
「行くぞユーイチ!!早くしろ!!」
「だけど…置いて逃げるなんて僕には無理です…」
桐島さんは僕の腕を強引に掴み、催促されてもなお逃げるのを拒んでいる僕を怒鳴りつけた。
「まだわからねぇのか!?田辺が…アイツが今どんな気持ちで俺達に逃げろって言ってるのか…わからねぇのかよ!!」
…その言葉にハッとした、そして気付いた…僕は彼の身だけを心配していたわけではない、罪悪感、それを抱くのが嫌で悩んでいたのかもしれない…
「田辺さん…僕は…」
僕はしっかりと田辺さんを見据えた。
「僕は……生きます。」
本当は助けてほしいはず、怖いはず…なのに田辺さんは僕達の身を案じてくれてる。その気持ちを無駄にはしない、罪悪感を抱いてでも…田辺さんの分まで僕は生きる。
僕の決意を読み取ったのだろう、田辺さんは軽く微笑んで僕を見つめ頷いた。
「祐一くん…これを…」
そう言って田辺さんはポケットから何かを取り出し僕に渡した。
これは……
「ライター…ですか?」
「あぁ、キミに貰って欲しいんやけど…」
金色の高そうなライター、…普段なら遠慮している所だが、僕はそれを強く握り締め自分のポケットに入れた。
「大切にします。」
そして僕は田辺さんに満面の笑みを見せる。
「はよ行き…もぅ…時間ないで…」
「はい…」
その会話を最後に、僕達はその場を走って離れた。
走っている途中で僕はチラッと桐島さんを見た。拳を握り、唇を噛み締めている…
僕と同じ気持ちなのだろう、今ハッキリとわかった…恐怖に勝るこの感情…、蟲に対する…怒り。
僕は絶対に許さない、蟲を…彼の体を蝕んだ悪魔を…許さない。
「行った…か……」
祐一くん…生きてくれ、皆も…しっかり逃げや…被害者は…佐々木と俺だけで…充分や…
これ以上…被害が…及ば…な…………ダメや、なんか…もう……………………
"喰いたい…"
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