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東館二階の階段付近、廊下端の部屋。皆はそこにいた。
僕と桐島さんは今までの事を全て皆に話す。
広間にあった血のこと、"奴"が徘徊していること、そして…田辺さんのこと。全てを偽りなく話した。
「そんな…ことが………田辺さん…」
千夏は瞳を潤ませていた…必死に涙を堪えている。無理もない…僕だって泣きたい気持ちだ。
誰もが俯き、沈黙が続く中…榊さんが口を開く。
「西館へ行くぞ…田辺が追って来る前にな。急げ、アイツはすぐ近くにいるんだ。」
「そんな言い方…あんまりです!!」
「…結奈ちゃん、気持ちはわかるけどよ…田辺はもう…田辺じゃねぇんだ。」
急に立ち上がって榊さんに怒鳴りつける結奈さんを、桐島さんが優しくも厳しい口調でなだめる。
おそらくその場にいた全員が結奈さんと同じことを思っただろう。しかし桐島さんの言葉で皆も気持ちを割り切り、現状を理解して…西館へ行くことに反対する人はいなかった。
僕達は急いで西館へと向かうため、警戒しながら部屋を後にした。
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