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(ん?ちょっと待てよ。一回念じて下着姿ってことは、もう一回念じれば…)
イケない思いつきとアブナい妄想の命ずるまま、俺はこれ以上ないほどの想いを込めて、強く念じた。
(透けろ。)
うん。鼻から赤い液体が漏れますね。これは。
何がどうしてこうなったのかは分からないが、この力が本物だということだけは良くわかった。
俺が心に念じれば、俺の目は衣服や物などを映さなくなり、その奥にある物を映すようになる。
つまり、俺は透視能力を手に入れたってことだ。
「まあ、もう大丈夫のようですし、これで帰って頂いて結構ですよ。」
奇跡の力に有頂天になっていた俺を、例のテカテカ医者がその存在を持って現実に引き戻した。
そう。この時俺は浮かれていたんだ。
だから「戻れ」と念じるのを忘れていた。
その結果、声を掛けてきた医者の方を反射的に向いた俺は、テカテカ親父のオールヌードを真正面から拝むハメになっちまったんだ…
うん。最悪。
翌日。
良く晴れた日のもと、俺はルンルンでランランな気分で外へと出かけた。
一浪して一留した俺は、二十五の今でもまだ大学生。大学四年生だ。
同級のヤツらはこの厳しい不況のもと、内定を貰うべく必死にリクルート活動に勤しんでるだろうが、俺はそんなことはしない。
何故って?
それは俺がいずれでっかい事をやる男だからだ。
今はただのスネっかじりだが、時がくれば大きく羽ばたいてやる。
予定だ。
昨日までなら、そんな事を言う俺はただの勘違い野郎だったが、今は違う。
この力。
透視能力があれば、黙ってたって頭角を現すこと間違いなしだ。
そこで俺は、この奇跡の力を使いこなすべく、街中へとやって来た。
青い空。白い雲。競い合うように建ち並ぶビル群。そしてそこを行き交う人々。
スーツ姿のOL。セーラー服の女子高生。オシャレな格好の女子大生。ショップ店員に買い物中の若奥様…
おいおい、変な想像はするなよ。
これはあくまで訓練なんだから。
透視能力を使いこなす為に、仕方なくやってることなんだよ。
まあ、どうせやるなら良いもん見たいってのは、男のサガだな。
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